邱永漢

ユーロの経済危機の火の粉は必ず日本に降りかかってきます。「日本の国債を保有しているのはほとんどが日本人だから大丈夫だ」と安心していますが、誰が保有していようが借金は借金です。その上、赤字が続いていますから、借金は増え続けています。 そうなれば、財務省が大量に紙幣を刷ってハイパーインフレにするか、大増税をして辻褄を合わせるしかありません。いずれにしてもお金を持っている人はひどい目に遭って、日本国内は2種類の日本人だけになる心配があります。毎月13万円を手にする生活保護の受給者と、彼らに選ばれた政治家です。 では、日本人はどうすればいいのか。おそらく唯一の方法は、そんな日本には見切りをつけて、世界を舞台に働くことでしょう。その舞台の一つは中国です。ただし、中国が人手不足だからではありません。世界第2位の経済大国となった中国は、かつて日本が経験したようなバブルに見舞われると思いますが、それを乗り越える消費大国になるでしょう。そのプロセスで先輩格にあたる日本人の果たす役割があるのです。 たとえば中国では日本製の粉ミルクは安全性や品質の高さにおいて日本人が思っている以上に評価されています。日本の粉ミルクは飛ぶように売れているし、空き缶まで売れています。中国製の粉ミルクを入れて売る悪徳商人もいるのです。 ほかにも日本人が戦える土俵が世界中にたくさんあります。にもかかわらず、海外に出ていく日本人はじつに少ない。アフリカを例にあげると、中国人は100万人もいますが、日本人はたったの7000人です。